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彼女たちのアボリジナル・アート
オーストラリア現代美術
アーティゾン美術館(東京都中央区京橋1-7-2)にて、「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展を2025年6月24日(火)より9月21日(日)まで開催いたします。本展は複数の女性アボリジナル作家に焦点をあてる日本で初めての機会となります。所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出品作品をとおして、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じ取っていただくと同時に、イギリスによる植民地時代を経て、どのように脱植民地化を実践しているのか、そしてそれがいかにして創造性と交差し、複層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形作っているのか考察します。
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
展覧会概要
地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートは改めて注目を集めています。2024年に開催された第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展で、アボリジナル作家の個展を展示したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞したことからも、その世界的な評価と関心の高さがうかがえます。またオーストラリア現代美術では、多数の女性作家が高い評価を得ており、その多くがアボリジナルを出自の背景としています。当館では2006年に「プリズム:オーストラリア現代美術展」を開催し、以降継続的に作品を収集しています。本展は複数の女性アボリジナル作家に焦点をあてる日本で初めての機会となります。所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出品作品をとおして、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じ取っていただくと同時に、イギリスによる植民地時代を経て、どのように脱植民地化を実践しているのか、そしてそれがいかにして創造性と交差し、複層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形作っているのか考察します。
見どころ
1.日本初、女性アボリジナル作家たちによる展覧会
女性アボリジナル作家の多くは、今日のオーストラリアのアートシーンを牽引し、さらに国際的な現代美術の舞台でも存在感を強めています。しかし現代アボリジナル・アートが興隆した1970年代から80年代は、女性は作家として認められず、男性が制作の中心でした。いかにして彼女たちはその立場を逆転し、後のアボリジナル・アートそしてオーストラリア現代美術の方向性を握るようになったのか。本展は、女性アボリジナル作家に焦点をしぼることで見えてくる、オーストラリア現代美術の現在地を、世代と地域を越えた7名と1組の作家から読み解いていく日本初の展覧会です。
2.アボリジナル・アートの「いま」に注目
現代アボリジナル・アートの特徴のひとつに、制作手法や作品のテーマ、そして用いられる素材の多様性が挙げられます。その豊かな表現力の拡がりに、女性作家が大きく貢献しています。例えば、バティック、ジュエリー、編み物、土地神話物語(ドリーミング)を含まない事象的な主題など、それまで芸術作品として受け容れられていなかった創作を、彼女たちは芸術表現に昇華させました。また出品作家のなかには、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興など、幅広いテーマを扱っています。そして、脱植民地化の言説が進むオーストラリアで、女性作家たちはアートを通して積極的にその実践を試みています。本展では、彼女たちの多様な創作活動を丁寧に追い、アボリジナル・アートの「いま」に迫ります。
3.オーストラリア各地で躍動する作家たちを一挙紹介
アボリジナル・アートの多様性は、オーストラリアの広い国土に由来します。国際的に高い評価を得る本展の出品作家の地域性は、彼女たちの作品を読み解く鍵のひとつです。伝統文化が深く根付くコミュニティ出身作家から、エミリー・カーメ・イングワリィ、マダディンキンアーシー・ジュウォンダ・サリー・ガボリ、ノウォンギーナ・マラウィリィ、そしてコレクティヴとして活動するジャンピ・デザート・ウィーヴァーズを出品します。現在のアボリジナル人口の8割が都市部に住むオーストラリア社会において、都市部出身もしくは都市部を拠点に活動する作家も見逃せません。マリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソンらを出品します。
出品作家

1980年代にジュエリー制作からキャリアをスタートさせたクラークは、植民地時代に失われた地域の伝統文化を復興させる活動に、創作をとおして積極的に携わっている。近年の彼女の作品は、レンチキュラー・プリントや、3D写真、ホログラムなどの写真技術を用いたマルチメディア・インスタレーションの制作から彫刻、立体作品、ヴィデオ・インスタレーションなど幅広い。
(画像)Maree Clarke in front of her possum skin cloak, photograph Eugene Hyland, National Gallery of Victoria

カイアディルトと呼ばれる先住民コミュニティ出身。80歳を超えた2005年から絵画制作を開始し、約2,000点に及ぶ作品を制作した。2016-17年にかけて、クイーンズランド州立美術館とヴィクトリア国立美術館にて個展が開催され、評価を高めた。2022年には、パリのカルティエ現代美術財団で回顧展が開催された(2023年ミラノ・トリエンナーレに巡回)。
(画像)© Courtesy: Brisbane Festival © The Estate of the Sally Gabori and Alcaston Gallery, Melbourne

タスマニアのアボリジナルを母方の祖先にもつゴフは、大人になるまで、自身の先住民のバックグラウンドを詳しく知らなかったという。創作活動をとおして自身のアイデンティティを模索しながら、緻密なリサーチを裏付けにタスマニアン・アボリジナルの文化や歴史、そして祖先が経験した体験や感情に寄り添う作品を、様々なメディア(映像、サイトスペシフィック・インスタレーション、タスマニア地方で採取される自然由来の素材)で制作している。
(画像)Image by Lucy Parakhina

2008年に日本で回顧展が開催されたイングワリィは、最も成功したアボリジナル作家のひとりであり、国際的に高い評価を確立した。1988–89年にアクリル絵具とカンヴァスによる絵画制作を始め、1996年に亡くなるまでの8年間で約3,000点以上の作品を制作した。2025年にテート・モダンにて大規模回顧展が開催される予定。
(画像)© Mayumi Uchida

ノーザンテリトリー準州北東部を占めるアーネムランド地方のコミュニティ出身。アーネムランドでは、ユーカリの樹皮に自然顔料で彩色したバーク・ペインティングと呼ばれる絵画手法が主流となっている。マラウィリィは伝統的な図像だけではなく、自身の感性によったモティーフや革新的な技法で、新たなバーク・ペインティングの可能性を切り拓いた。
(画像)Photograph: Buku-Larrnggay Mulka Centre

南オーストラリア大学視覚美術学科でガラス制作を専攻。吹きガラスを用いたインスタレーションを得意とし、祖先が経験した植民地時代の出来事や、冷戦期の核実験の場として利用された故郷の大地の姿、そして現在も鉱山採掘によって削られていく大地の姿を伝えている。繊細なフォルムとシンプルな造形、そして彼女の出身コミュニティの歴史とオーストラリアの社会問題や環境問題を核としたテーマ性の高さから、国内外で高い評価を確立している。
(画像)Janelle Low - Yhonnie Scarce -©JL_20161010_Yhonnie_headshots-140-1

中央砂漠から西砂漠地域のコミュニティに属するアーティスト・コレクティヴ。砂漠に自生する草を主な素材に伝統技法を用いながら立体作品を制作し、現代社会に生きるコミュニティの身近な事物や日常の出来事を映像作品にしている。地域の伝統や文化を集団で継承し続けたアボリジナルにとって、コレクティヴという創作形態は重要な要素のひとつとなっている。

1997年、エミリー・カーメ・イングワリィとともに先住民作家として初めて、ヴェネチア・ビエンナーレのオーストラリア館代表に選ばれる。制作手法は、絵画、プリント、ドローイング、彫刻、マルチメディアなど幅広い。イギリス植民地時代の公式文書やアーカイブ資料を活用して作品を制作するワトソンは、オーストラリア社会の歴史と文化をアボリジナルの視線から多角的に探っている。
(画像)Judy Watson, 2022. Photo by Rhett Hammerton. Image courtesy of the artist and Milani Gallery, Meanjin / Brisbane
こちらの画像のご利用については、広報お問い合わせ先までご相談ください。
マダディンキンアーシー・ジュウォンダ・サリー・ガボリ《祖父の国》2011年、合成ポリマー絵具・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館 ©︎ Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
マダディンキンアーシー・ジュウォンダ・サリー・ガボリ《ニーニルキ》2010年、合成ポリマー絵具・リネン、個人蔵 ©︎ Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
エミリー・カーメ・イングワリィ《春の風景》1993年、合成ポリマー絵具・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館 ©︎ Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
エミリー・カーメ・イングワリィ《無題(ファイナル・シリーズ)》1996年、合成ポリマー絵具・ベルギーリネン、個人蔵 ©︎ Copyright Agency, Sydney & JASPAR, Tokyo, 2025 C4919
開催概要
会期 |
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会場 | アーティゾン美術館 |
住所 | 104-0031 東京都中央区京橋1-7-2 Google Map |
展示室 | アーティゾン美術館 6・5階展示室 |
時間 |
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主催 | 公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館 |
後援 | オーストラリア大使館 |
担当学芸員 上田杏菜、賀川恭子 |
関連プログラム
アーティストによるギャラリートーク
日時:2025年6月27日[金] 15:30 – 16:30、18:30 – 19:30
マリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソン
会場:アーティゾン美術館6階、5階展示室
*申し込み不要
*各回とも逐次通訳あり
土曜講座
「オーストラリア先住民とアート ー1970年代からの展開ー」
2025年7月19日(土)
講師:窪田幸子(芦屋大学学長、神戸大学名誉教授)
「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術について」
2025年8月23日(土)
講師:上田杏菜(アーティゾン美術館学芸員)
会場:アーティゾン美術館 3階 レクチャールーム
時間:14:00 – 15:30(13:30開場)
*事前申込制
*詳細は 当館ウェブサイト にてお知らせします。
同時開催
石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト(4階展示室)
19世紀から20世紀にかけての西洋近代美術や、抽象表現を中心とする20世紀初頭から現代までの美術、そして日本の近現代美術など、石橋財団コレクションの代表作のなかから様々な魅力をご紹介します。
会 期:2025年6月10日[火] – 9月21日[日]
開館時間:10:00–18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休 館 日:月曜日(7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日、8月12日、9月16日
会 場:アーティゾン美術館 4階展示室
主 催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展の会期前、6月10日[火] – 6月22日[日]は4階展示室「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」のみ公開し、6・5階展示室は休室します。
入館料(税込):*6月10日[火]–6月22日[日]のみ
日時指定予約制(2025年5月10日[土] ウェブ予約開始)
ウェブ予約チケット500円、窓口販売チケット500円、学生無料(要ウェブ予約)
*予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットをご購入いただけます。
*中学生以下の方はウェブ予約不要です。
【「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」オンライン・プレスリリース】
https://www.artpr.jp/artizon/highlight2025
広報用画像一覧
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASYマリィ・クラーク《ポッサムスキン・クローク》2020-21年、ポッサムの毛皮、ヴィクトリア国立美術館、メルボルン © Maree Clarke
マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke
ジュリー・ゴフ《1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》2008年、木製椅子・焼けたティーツリーの枝、オーストラリア国立美術館、キャンベラ © Julie Gough
ジュリー・ゴフ《ダーク・バレー、ヴァン・ディーメンズ・ランド》2008年、タスマニアン・フィンガル・バレーの石炭、ナイロン、北ミッドランド(タスマニア)の落角、タスマニアン・オーク、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Julie Gough
ノウォンギーナ・マラウィリィ《ボウンニュー》2016年、ナチュラル・オーカー・樹皮、石橋財団アーティゾン美術館 © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
ノウォンギーナ・マラウィリィ《バラジャラ (ジャラクピに隣接するマダルパ氏族の土地)》2019年、自然顔料、リサイクルした印刷用インク・ユーカリの樹皮、ケリー・ストークス・コレクション © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
ノウォンギーナ・マラウィリィ《バラジャラ》2018年、自然顔料、印刷用インク・樹皮、ケリー・ストークス・コレクション © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館
© Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASYイワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《ドンキー》2021年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《私の犬、ブルーイーとビッグ・ボーイ》2018年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル Image by Jonathan Daw. © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
ジュディ・ワトソン《赤潮》1997年、顔料、パステル・カンヴァス、ニューサウスウェールズ州立美術館 © Judy Watson / Copyright Agency, Image © Art Gallery of New South Wales
ジュディ・ワトソン《記憶の深淵》2023年、天然藍、グラファイト、シナグラフ ペンシル、合成ポリマー絵具・リネン、作家蔵(ミラニ・ギャラリー) © Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia. Photography by Carl Warner.
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