プレスリリース

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「版画×写真 1839-1900」展
Prints × Photographs 1839-1900

開催期間会期
※掲載申込み受付終了

町田市立国際版画美術館にて「版画×写真 1839-1900」展を2022年10月8日(土)より開催いたします。写真の発明は世界を大きく変えました。とりわけ大きな影響を受けたのが、何世紀にも渡ってイメージを写し伝えるという同じ役割を担ってきた版画です。本展は世界初の写真術であるダゲレオタイプが公表された1839年を起点に、写真の技術が向上し印刷技術として実用化されていく19世紀末まで、版画と写真が支えあい競いあった関係を探るものです。ヨーロッパを中心に、版画と写真に加え、カメラや撮影機材をはじめとする関連資料180点を紹介いたします。

オノレ・ドーミエ 《写真術を芸術の高みにまでひきあげるナダール》、1862年、リトグラフ、国立西洋美術館

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展覧会概要

写真の発明は世界を大きく変えました。とりわけ大きな影響を受けたのが、何世紀にも渡ってイメージを写し伝えるという同じ役割を担ってきた版画です。
19世紀の版画と写真の関係は、これまで対立ばかりが語られてきました。
しかし大量印刷ができず撮影に長い時間を要すなど技術的に不十分な点が多かった初期の写真には、版画によって支えられる部分も多く、両者は補いあう関係でもありました。やがて写真が技術的にめざましく発展していくなかで、両者は競いあいさまざまな表現を生み出していくことになります。
本展は世界初の写真術であるダゲレオタイプが公表された1839年を起点に、写真の技術が向上し印刷技術として実用化されていく19世紀末まで、版画と写真が支えあい競いあった関係を探るものです。ヨーロッパを中心に、版画と写真に加え、カメラや撮影機材をはじめとする関連資料180点を紹介いたします。

本展の見どころ

1. 版画の視点から見た19世紀の写真史
19世紀初めに登場して急速に発展していった写真と、その登場によって大きな影響を受けた版画。両者の深い関係を、版画専門の美術館ならではの視点で見直す特別展です。

2. 版画と写真のハイブリッド!?珍しい作品を紹介
写真の発明者ダゲールのリトグラフや、写真の技法を用いた版画/版画の技法を用いた写真など、版画と写真の境界がゆるやかだった時代のバラエティに富んだ作品を展示します。

3. 写真黎明期を代表作品を、カメラとあわせて展示
タルボット、ル・グレイら黎明期を代表する写真家の名品と併せて、当時のカメラ、薬品、ポージング用の小道具などの立体資料も展示。写真の成り立ちをわかりやすく解説します。

展示構成

第I章 写真の登場と展開
第II章 実用と芸術をめぐる争い
第III章 競い合う写真と版画

 III-1 肖像:プライベートとパブリック
 III-2 風景:記録と芸術
 III-3 報道:主観と客観


I章 写真の登場と展開
西洋では、目に見えるものをあるがままに再現して画像として残したいという欲望は古くからありました。1839年に公開された写真術は、そうした願いを現実のものにした画期的な技術でした。
フランスの興行師ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが1839年に発表したダゲレオタイプは、世界初の写真術として知られる金属板写真。焼き増しできず、露光にも長い時間が必要でしたが、鏡のように高精細な画像は人々を大いに魅了しました。以後、科学者たちは技術改良に取り組み、1840年代にはダゲレオタイプの露光時間は数秒にまで縮まります。
1点しか作ることのできないダゲレオタイプは、版画家たちの技術なくしては複製できませんでした。それに対してイギリスの科学者ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットは、1841年にネガ・ポジ法によるカロタイプを考案。この焼き増し可能な紙写真は目覚ましい発展を遂げ、1850年代には鮮明な画像が得られるコロディオン湿板方式と鶏卵紙の組み合わせが普及していきました。

II章 実用と芸術をめぐる争い
版画と写真に「画像を写す」という共通の機能がある以上、一定の技術水準に達した写真が版画の領域を侵すのは当然のなりゆきでした。
版画は画像を複数枚作る技術(=絵を印刷する技術)として、何世紀にも渡り幅広い役割を担ってきました。そのひとつに「複製版画」があります。これは油彩や彫刻など他の美術作品に基づいて制作される銅版画で、様々な美術作品のイメージを広く伝えてきたものです。アカデミーの規範では、偉大な画家の作品を原画とした複製版画は高貴なものとされ、版画家が原画を解釈して版画表現に置き換えた新たな作品としても評価されました。けれども正確さと迅速さにおいて、複製の分野での写真の優位は疑いようがありません。実用的な役割から解放された版画は、美術表現となることで生き残る途を探っていくことになります。
一方、技術が未発達で煩瑣な作業が必要だった初期の写真では、写真家は技術面に集中する必要がありましたが、その改良が進むなかで、芸術としての評価を求める者が現れることになります。これに対して既存の美術界からは、レンズの前のものを機械的に写すだけの写真は芸術ではないという非難の声があがります。写真家たちは構図や光の感覚、焼き付けや仕上げで創意を示そうとしました。試行錯誤ののち、技術をさらに発展させた写真は、瞬間を正確に捉えるという特性に立ち戻り、写真ならではの表現を探っていくことになります。

III章 競い合う写真と版画
 画像を複製し記録する版画の特権的な領域に、写真は果敢に挑戦していきました。正確さと迅速さで優る写真に、技術としての版画が取って変わられるのは必然のなりゆきでした。そしてその経過を追っていくと、それが単なる技術の移行だけではなく、価値観の変化にも関わっていることが見えてきます。
この章では、何世紀にもわたり版画が活用され、そののち、今日に至るまで写真が活躍してきた3つのテーマについてみていきます。

III-1 肖像:プライベートとパブリック
発明当初から肖像写真への期待は大きく、早くも1840年には初の肖像写真館がニューヨークに設立されています。磨き上げられた金属板に定着された高精細なダゲレオタイプの肖像は、大きな驚きを与えたことでしょう。1850年代以降、肖像写真についても芸術性の問題が論じられていきました。1854年に安価な名刺判写真が発明されると、人々は気軽に写真館を訪れるようになり、家族や知人に加え、著名人を写した市販の名刺判写真を収集することが流行します。かつて肖像画には、王侯貴族の巨大な肖像画や為政者や文化人の姿を流布させる肖像版画のような公的なものと、私室に飾る肖像画や携帯可能なミニアチュールなどの私的なものという区別はありましたが、写真の登場と展開はその境界を曖昧にしていったのです。

III-2 風景:記録と芸術
19世紀半ばまで、遠く離れた土地の様子は、現地に赴いた画家たちのスケッチや、それに基づく版画によって広められました。とりわけ世界各地の遺跡を表した版画は過ぎ去った時代への想像をかき立て、考古学研究や文化財保護の気運を高めました。版画による景観図や複製図はロマンティックな魅力を備えていましたが、記録の正確さにおいて写真に劣っていたと言わざるを得ません。その点にいち早く気付いたフランス政府は、1850年代初頭に国内の歴史的記念物を撮影するプロジェクトを立ち上げます。時を同じくして、文学者のマクシム・デュ・カンは中東旅行で撮影した写真を収めた紀行写真集を発表。以後、商機を見出した職業写真家たちが続々と中東を訪れ、高い芸術性を備えた遺跡写真が世に出されました。

III-3 報道:主観と客観
現在、世界各地で起こる出来事はネットワークを介した映像としてすぐさま伝わりますが、19世紀において同様の役割を果たしたのは写真と版画だったのです。『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』(1842年創刊)を皮切りに数多くの絵入り新聞が誕生した時代、西洋では文字ではなく画像による報道メディアが急速に展開していきました。発明から間もない写真が新聞の挿絵原画として役立てられる一方で、画家の主観や想像力が入り込むスケッチやカリカチュアもまた、決定的瞬間を活き活きと表現するために利用され続けました。1850年代に勃発したクリミア戦争では画家とともに写真家が従軍し、イギリスのフェントンが世界初の戦争写真を撮影しました。彼のガラスネガは本国へ送られ、戦地の様子を客観的な情報として伝えました。1871年にフランスで成立した労働者自治政府パリ・コミューンをめぐる内争では、リトグラフなど旧来の印刷メディアを通じた情報戦が繰り広げられると同時に、写真家たちが廃墟と化した街の様子を記録しています。

開催概要

会期
2022年10月8日(土)〜2022年12月11日(日)
会場 町田市立国際版画美術館
住所 194-0013 東京都町田市原町田4-28-1 Google Map
時間
平日:10:00~17:00 (入場16:30まで)/土日祝:10:00~17:30 (入場17:00まで)
休館日
月曜休館、ただし10月10日(月・祝)は開館し、10月11日(火)は閉館
観覧料
一般900(700)円、大・高生450(350)円、中学生以下無料 
*( )内は20名以上の団体料金
*身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者保健福祉手帳をご提示の方と付き添いの方1名は半額
※感染症対策のため、入場制限をおこなう場合があります。お客様の安全と安心のため、マスクの着用にご協力ください。
※状況により会期や関連イベントを変更する場合があります。ご来館前に当ホームページ、SNSをご覧ください。
【無料日・割引】
無料日: ① 展覧会初日:10月8日(土) ② 文化の日:11月3日(木・祝) ③ シルバーデー(65歳以上の方は無料):10月26日(水)・11月23日(水・祝)
割引: ① 各展覧会共通=リピーター割引(200円引)
シェアサイクル割引、タクシー割引、パスポート割引、ウェブクーポン割引(100円引)
② 本展独自割引=SNS割引
ツイッター、インスタグラム他各種SNSにて、「#町田市立国際版画美術館」のハッシュタグを付けてポスター、看板など本展のロゴが入った画像をシェアすると、観覧料が200円引き!
※割引の併用はできません。
TEL 042-726-2771
URL
【町田市立国際版画美術館|公式サイト】
http://hanga-museum.jp/
URL2
【町田市立国際版画美術館|展覧会情報ページ】
http://hanga-museum.jp/exhibition/schedule/2022-515
SNS
主催 町田市立国際版画美術館
特別協力 横浜市民ギャラリーあざみ野
助成 公益財団法人朝日新聞文化財団

関連イベント

記念講演会「19世紀の写真技術~発明から普及まで~」
講師:三井圭司(公益財団法人東京都歴史文化財団 学芸員)
日時:11月5日(土)14:00~15:30
会場:講堂 ※本展観覧券(半券可)が必要です。

公開制作「写真から版画へ」
フォトエッチングとフォトポリマーグラヴュールの技法で作品を制作する作家を招き、その技法解説と制作の一部を実演して頂きます。
日時:11月26日(土)13:30~15:00(途中休憩含む)
講師:藤田修(銅版画家)
会場:講堂 
※参加無料、入退室自由(先着60名)

「だいじな写真をケースに入れよう」
写真が貴重だった19世紀の人の気持ちになって、紙のケースを作ってみましょう。子どもから大人まで参加できる簡単な工作イベントです。
日時:10月22日(土)10:00~ (先着60名、なくなり次第終了)
会場:エントランスホール
※「第24回ゆうゆう版画美術館まつり」(10月22日(土)・23日(日)開催)との連携イベント
※ 参加無料

担当学芸員によるギャラリートーク
日時:10月29日(土) 14:00~ 
11月20日(日) 14:00~ 
各30分程度
会場:企画展示室1 ※当日有効観覧券が必要です。

プロムナード・コンサート「2×2=4 Hands ピアノデュオ4つの手で奏でる音色の世界」
演奏:嘉村ゆりえ、嘉村えりか(ピアノ)
日時:11月12日(土) 13:00~、15:00~(各回30分程度)
会場:エントランスホール 
※参加無料、申込不要 
※新型コロナウイルス感染症対策のため入場を制限する場合があります。

同時開催
ミニ企画展「内海柳子とデモクラートの作家たち」
9月28日(水)~12月18日(日) 常設展示室 入場無料

広報用画像一覧

  • 画像説明オノレ・ドーミエ 《写真術を芸術の高みにまでひきあげるナダール》、1862年、リトグラフ、国立西洋美術館
  • 画像説明アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《写真家セスコー》、1896年、リトグラフ、国立西洋美術館
  • 画像説明ダゲレオタイプ制作のための処理用具、1845年頃、横浜市民ギャラリーあざみ野
  • 画像説明ジルー・ダゲレオタイプカメラ、1839年(後年のレプリカ)、横浜市民ギャラリーあざみ野
  • 画像説明マシュー・B・ブレイディ・スタジオ《二人の子ども》、1855年頃、ダゲレオタイプ、横浜市民ギャラリーあざみ野
  • 画像説明ノエル・ぺマル・ルルブール『ダゲリアンたちの世界旅行』より、1840-43年、銅版画、個人蔵
    ※ダゲレオタイプを銅版画で複製したもの。ルルブールは世界各地で撮影したダゲレオタイプをこのような版画にして 『ダゲリアンたちの世界旅行』という画集にして出版、大きな評判を得ました。
  • 画像説明カミーユ・コロー《乙女と死》、1854年、クリシェ・ヴェール、町田市立国際版画美術館
    ※クリシェ・ヴェールはガラス板に描画し、印画紙に焼き付ける、写真と版画のハイブリッドな技法。
  • 画像説明ジョージ・バクスター《磔刑(大)》1855年(1868年頃刷り)、バクステロタイプ、東京工芸大学中野図書館
    ※一見写真に見えますが、実は銅版と木版を組み合わせた版画。バクステロタイプとは発明者バクスターが自分の名にちなんでつけた名称です。
  • 画像説明ギュスターヴ・ル・グレイ《海景》、1856-59年、鶏卵紙、東京都写真美術館
  • 画像説明エドゥアール・マネ《ナダールの写真によるボードレールの肖像》、1869年刊、 エッチング、町田市立国際版画美術館
  • 画像説明デイヴィッド・ロバーツ《バールベック》、1842-49年刊、 リトグラフ、手彩色、町田市立国際版画美術館
  • 画像説明マクシム・デュ・カン《シリア、ジュピター神殿 バールベック》、1852年刊、塩化銀紙、東京都写真美術館
  • 画像説明マクシム・デュ・カン《アブ・シンベル》、1852年刊、塩化銀紙、東京都写真美術館
  • 画像説明エドゥアール・マネ《バリケード》、1871年頃、リトグラフ、町田市立国際版画美術館
  • 画像説明レオン・ジャン=バティスト・サバティエ『パリとその廃墟』より、1873年、リトグラフ、大佛次郎記念館
  • 画像説明シャルル・マルヴィル《パリ市庁舎(コミューン後)》、1871年、鶏卵紙、東京都写真美術館
  • 画像説明
  • 画像説明

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