プレスリリース
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企画展
うるしとともに― くらしのなかの漆芸美
同時開催 「受贈記念 伊万里・染付大皿の美」
泉屋博古館東京(東京都港区六本木1丁目5番地1号)にて、「うるしとともに― くらしのなかの漆芸美」を2024年1月20日(土)より2月25日(日)まで開催いたします。本展では、住友コレクションの漆芸品の数々を、用いられてきたシーンごとにひもとき、漆芸品を見るたのしみ、使うよろこびについてもう一度考えたいと思います。また同時開催として、漆芸品と同じく私たちのくらしを彩ってきた陶磁器のなかから、近年当館へご寄贈いただいた瀬川竹生コレクションの染付大皿を受贈後初めて公開します。
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展覧会概要
アジアの人々が見出した不思議な樹液、漆。ある時は天然の接着剤、またある時には表面に艶と光沢を与える塗料として活用されてきました。そして漆の特性を活かして、各地域の事情や美意識に応えた様々な漆芸技法が花開きました。東洋の人々のくらしのなかには、その技で生み出された多彩な漆芸品が深く根差しています。本展では、住友コレクションの漆芸品の数々を、用いられてきたシーンごとにひもとき、漆芸品を見るたのしみ、使うよろこびについてもう一度考えたいと思います。
また同時開催として、漆芸品と同じく私たちのくらしを彩ってきた陶磁器のなかから、近年当館へご寄贈いただいた瀬川竹生コレクションの染付大皿を受贈後初めて公開します。大皿に表された斬新で大胆な意匠は、圧倒的な迫力で粋な青と白の世界へみなさまを誘います。
展覧会のみどころ
1. ハレの日を祝うお膳が勢ぞろい
統一のとれた揃いの漆器から、在りし日の祝宴の光景が浮かび上がります。
2. 蒔絵、螺鈿、彫漆・・・漆の可能性を引き出した技法の数々をご紹介
目の前の作品をつくりあげた技を知ることもまた、漆芸品を見る楽しみのひとつ!
3. 染付大皿、初公開!
江戸時代後期に誕生した、おめでたい、大迫力の染付大皿をご紹介。
4. 2024年の干支「龍」も、あちこちに
辰年を迎えて最初の展覧会!!龍をモチーフにした漆芸品・染付大皿が続々登場します。
展覧会の構成
第一展示室
シーン1 宴のなかの漆芸美
今を生きる私たちにとって、漆と最も身近に接する機会は食事のときかもしれません。艶やかな漆器の塗り肌は食材の色味を引き立てます。さらに蒔絵などの華やかな装飾が、食卓に季節感や情趣を添えます。一方で、漆の塗膜によって油汚れなどは洗い流しやすくなりますから、やはり漆は実用にも優れた素材です。まずは「食事」を入り口に、うるしとくらしについて考え始めてみます。
当館が収蔵する住友コレクションは、江戸時代から続く大阪の商家・住友家によって蒐集され、実際に用いられてきたものです。本展示室では、住友家のハレの日の宴を彩った漆芸の食器・酒器をご紹介します。客人をもてなそうとする主人の趣向と、その意を汲んで漆器を作り上げた人々の技をご堪能ください。
第二展示室
シーン2 茶会のなかの漆芸美 / シーン3 香りのなかの漆芸美
シーン4 檜舞台のうえの漆芸美
ここでは、茶の湯、香道、能楽といった日本の伝統文化のなかで用いられてきた漆芸品をご紹介します。
多岐にわたる茶道具のうち、「席中の主」とも称される茶の湯釜、亭主と客人を繋ぐ存在で客人が直接触って口を付ける茶碗、そして床の間に在って茶会のコンセプトを示す掛幅などに耳目は集まりがちです。ですがここでは、漆の茶道具が茶会をどう彩ったのかに注目します。
香木を焚いて香りを聞く香道の世界では、源氏香のように古典の教養を背景とした組香が楽しまれ、その道具にも文学的意匠が好まれました。蒔絵は、そうした意匠を古典文学の情緒まで汲み取って豊かに描き出しました。
伝統文化で用いられた漆芸品が当館に数多く伝わるのは、住友家十五代当主の住友吉左衞門(号:春翠)〔1864~1926〕の存在が大きく、住友春翠は自身の茶会のために漆芸品を収集していました。通常、茶会は特別な日の催しという印象を受けますが、春翠の場合は親しい友と日常的に茶を喫していた様子が記録から垣間見えます。
伝統文化がとけ込んでいたと言える春翠のくらしですが、なかでも特筆すべきは能楽で、春翠は生涯にわたって稽古に励みました。演能のために集めた楽器には蒔絵の美しい装飾が施され、高い鑑賞性を兼ね備えています。
第三展示室
特集 漆芸の技法―彫漆・螺鈿・蒔絵
漆はウルシの木から取れる樹液です。この樹液は、ウルシの木が傷ついたとき、その傷を塞ぐためのいわば自己防衛として分泌されるものです。傷口にしっかりくっついて、堅く固まり、木内部へ水はもちろん酸・アルカリまで侵入を拒み、腐敗を防ぎます。この樹液に、東南アジアから東アジアにかけての人々は、接着剤や防腐のためのコーティング剤などとしての可能性を見出し、独特の樹液文化を形づくります。
さらに面白いのは、漆を単に有用な樹液として利用するので終わらせず、その特性を活かして美的世界を切り開いた点にこそあります。たとえば、一度固まると頑丈な塗膜をつくる漆は、刀による彫刻を可能としました〔彫漆〕。また、塗ってから固まるまで時間を要するという性質も重要でした。漆が硬化するまでの時間が、貝殻をつけたり〔螺鈿〕、金銀粉を蒔いたり〔蒔絵〕する余地になり、多彩な技法が編み出されます。そして何より人々を惹きつけたのは、つややかで美しい漆の塗り肌でしょう。
シーン5 書斎のなかの漆芸美
誰もが夢見る自分だけの書斎。読書をしたり、思索に耽ったり、文章を綴ったり、絵を描いたり、楽器をつま弾いたり、そして友と清談を交わしたり―書斎での自適なくらしは、いつの時代も憧れの的でした。その淵源は中国の文人たちに遡ることができます。
中国文人は、自らの書斎つまり「文房」を理想の空間にするためには、そこに備えるべき道具つまり「文房具」にも清らかな美しさが必要だと考えました。そこで、重宝されたのが漆芸品です。驚くべきほど細緻な彫漆や螺鈿の技で吉祥のモチーフを隅々まで表した文房具が数多く残されています。そのため、本当に道具として実用したのか、あるいは部屋の装飾を目的とした鑑賞用途のものだったのか思わず考えてしまいます。
一方で、蒔絵で華やかに彩られた日本の文房具には、花鳥風月の意匠が多く見られます。また、物語作品の一場面を想像させるような図案を表した作品も多く見られます。四季の移ろいを感じ、文学と美術に思い巡らせるのも、書斎の楽しみと言えるでしょう。
終章 うるしと友に ―漆芸品を贈る
煌びやかで美しく、耐久性にも優れた漆芸品は、贈答の品としても喜ばれました。住友家でも、親しい人々に漆芸品を度々贈っており、なかでも海外からの客人には蒔絵で彩られた作品を友好の証としてプレゼントしました。そうした漆芸品は、まさに日本を代表する工芸品として海外へ渡って行った例だと言えるでしょう。
当たり前ではあるのですが、贈答してしまった漆芸品はコレクションにはもうほとんど残っていません。ただし反対に、友人たちからプレゼントされた漆芸品は今も残されています。本展の最後は、そうした交友の証として住友家にもたらされた漆芸品をご紹介します。そして住友家当主が、健やかな成長を祈って娘に贈った雛祭りの会席膳で締めくくります。
第三-第四展示室
受贈記念「伊万里・染付大皿の美」
江戸時代、日本初の磁器生産に成功し、「初期伊万里」、「柿右衛門」、「古伊万里」など海外への輸出向け陶磁器を生み出したのは、肥前・有田の地域(現在の佐賀県有田)でした。
江戸時代後期、料理文化の隆盛とともに、料理を盛り付ける「うつわ」もより華やかになり、さまざまな文様が描かれた直径40cmを超える大皿が有田の地で数多く生産されました。有田から伊万里の港へと運ばれた大皿は、日本の各都市へと流通し、往時の宴会の場を盛り上げました。
染付大皿に描かれるのは、伝統的な意匠から、唐獅子に牡丹などのめでたいもの、また、当時大流行していた浮世絵をもとに描かれたような図柄、さらには洒落を利かせたものまで多岐にわたります。絵付け職人たちの美意識が反映された、斬新で大胆な文様の大皿に目を見張ることでしょう。この度は、染付大皿に魅了され、生涯に渡り収集し続けた故・瀬川竹生氏の染付大皿コレクションを、受贈記念として特別に公開致します。染付大皿の美の世界をお楽しみください。
開催概要
会期 |
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会場 | 泉屋博古館東京 |
住所 | 106-0032 東京都港区六本木1丁目5番地1号 Google Map |
時間 |
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入館料 |
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TEL | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
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主催 | 公益財団法人泉屋博古館、日本経済新聞社 |
担当学芸員 | 竹嶋康平(泉屋博古館 学芸員 / うるしとともに) |
森下愛子(泉屋博古館東京 主任学芸員 / 瀬川コレクションの染付大皿) |
広報用画像一覧
- 象彦(八代 西村彦兵衛)《扇面謡曲画蒔絵会席膳椀具》大正時代・20世紀 泉屋博古館
- 原羊遊斎《椿蒔絵棗》江戸時代・19世紀 泉屋博古館東京
- 《青貝芦葉達磨香合》《朱塗菱形十字花弁盆》ともに中国・明時代16世紀 泉屋博古館東京
- 《龍図堆黄円盆》明・万暦17年(1589)泉屋博古館
- 《仙人図螺鈿食籠》元時代・14世紀 泉屋博古館
- 《蜻蛉枝垂桜蒔絵香箱》江戸時代・17~18世紀 泉屋博古館東京
- 《染付玉取龍文大皿》 江戸時代後期・19世紀 泉屋博古館東京(瀬川竹生コレクション)
- 《染付恵比寿大橋文大皿》江戸時代後期・19世紀 泉屋博古館東京(瀬川竹生コレクション)
- チラシ画像(表)
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